【1】異世界に勇者猫として召喚された金沢弁をしゃべる猫はチートスキルで世界を征服するようです。

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第一話 「どうも、りりが勇者猫です。」

 

今日も召喚猫の仕事は忙しい。この世界は需要と供給で成り立っている。りりは供給する側の猫。世界には猫不足で困っとる人間がいっぱいおる。そんな人間達に猫を供給するのがここ、「猫召喚サービスセンター」。ここでは猫カタログに載っとる猫を対価と交換で召喚して、世界を救ってもらう事ができるお手軽サービス。経営は成功、今ではお昼寝以外の4時間はほぼ召喚されっぱなしの上昇企業になってしまった。

今日もりりは召喚される。昨日の世界はりりにブラシをしようとする人間がいっぱいいたから滅ぼした。今日の世界ではそんな事にならないでほしいと願って、魔法陣の上に待機する。

「りりさん召喚準備いいですか?」
「はーい、召喚してくださーい。」
「りりさんセット出来ました!ではいきます!」
「いってらっしゃーい。」

眩しい光に包まれた後、りりは毛だらけの魔法陣の上に召喚された。この魔法陣の使用感をみると何度も猫を召喚した後だと思われる。まずは目の前の人間に業務内容を説明する。

「どうも、召喚されてきましたえりざべすです。みんなからはりりぴって呼ばれとります。この世界の悪を倒すために、伝説の猫を召喚したと思うげんけど……それはりりです。」

りりを召喚したと思われる人間はりりの可愛さにメロメロになっていた。当然や。さっそく恒例の召喚した対価をいただこうと思った時に気づいた、いつもなら魔法陣においてある対価がない。話が違う。

「召喚する時の説明書みたいなやつに、必要なものはカニカマですとか書いとらんかったけ?カニカマがないとりりを召喚出来んはずねんけど?」

人間は焦ってカニカマを渡してきた。うん、鮮度も抜群。しっかり冷蔵庫に保存されていたみたいで少し冷えたカニカマをりりは食べた。むしゃむしゃと食べながら今後の説明をする。召喚されたからには悪は倒すけど、ちゃんと持たせるものは持たせてほしい。そうじゃないと魔王とかそういうの倒すのは難しいと説明した。

今まで何度も猫を召喚してきた所を見るとこの世界の魔王はなかなか手強いらしい。これは武器も必要になるかもしれん。カニカマを飲み込んで口の周りの味もしっかり堪能して言った。

「聖剣えくすかりばぁとかそういうのでいいし、武器もほしい。」

魔王を倒すにはえくすかりばぁが必要やって、よくテレビでゆっとったし、それがあれば安心やと思った。りりの頭の中で召喚された4時間でどうやって魔王を倒しにいくか計算をする。4時間後にはおひるねの時間やから、定時退社するために時間は有効活用しんといけん。それなのに目の前の人間はりりが可愛いからってスマートフォンで写真を撮りまくっとる。そんな時間はないから、意地悪を言って急かす事にした。

「りりは別にいいげん、この世界がどうなろうとも。本当は守りたいけど、カニカマないとレベルあがらんから魔王倒せんかもしれん。」

本当はカニカマがなくてもレベルはあがるけど、そんなの人間はしらんから嘘ついた。これできっとたくさんカニカマがあたるはずや。この世界がどうなろうともりりには関係ないし、早く帰りたい一心で適当な事を言った。

「あーあ、ちゅーるとかかつぶしとか、カニカマとか焼きガツオとか用意してくれんなん力出せんくて負けてしまうかもしれん。りりは別に負けてもいいげんけどね。また別の世界に行くだけやし。」

そういうとのろのろと準備を始めた。りりはその間優雅にカニカマを食べる事にする。さっき2グラム分口に入れたからあと3グラムはあるはずや。グラムをお口の中で測りながらカニカマを可愛いお口に放り込んでいく。

「あれ……、このカニカマ4グラムしかないげんけど?」

あと1グラムあるはずなんに、用意されたカニカマはない。お口の中で溶けていったカニカマの風味を舌で転がしながら人間に聞くと、人間はカニカマはもうないから歯ブラシおやつで我慢してほしいって言ってきた。それじゃあ話が違う。

「ちゃんと5グラムないとこまれんけど?りりお家帰れんがいね!」

猫召喚サービスセンターでは対価をもらう事によって、いつでも気分で帰れるようになる。もらったらその場で帰る事ももちろんできる。猫はきまぐれやから。りりはプロやから一応お仕事は適当にしてあげてから帰っとる。もちろんレビューは★5、No1召喚猫としてサービスも充実させとった。なんにカニカマをあと1グラム貰えんかったら魔王と戦う時ピンチになったら逃げる事もできんくなる。

「すみません、すみません、うちは貧乏なのでカニカマは4グラムしかあげられないんです。」
「貧乏人は猫を召喚しんといて。」

困った事にこの家にはカニカマはもうないらしい。この貧乏な人間は用無しや。りりは隠しとった爪で人間をぎぎぎってしてから家の中のおやつをあるだけ奪う。この家カニカマはないがんに、ちゅーるとかかつぶしは揃っとる。仕方ないから全部奪っていく。

定時退社まで後3時間ぐらい。りりはあと1グラムのカニカマを求めてこの世界を彷徨い歩く。なんとしても定時で帰らないとサービス残業になってしまう。それだけは絶対に嫌や。ついでにむかむかするからこの世界を征服してりりぴ帝国にしよう。一生りりの奴隷として人間を支配していく事にする。

カニカマの1グラムは命より重い。

 

 

本日20時、第一話アテレコ動画公開します。
主演のエリザベスさんよりメッセージいただいています。

りり
りり

勇者猫りりぴを読んでいただいてありがとうございます。この物語を執筆するにあたって色々取材をさせていただきました。猫にとっておやつはとても大切なものです。おやつがない生活なんて考えられません、そう言った事が少しでも伝わればいいなと思い、メッセージを込めました。あとサービス残業もなくなればいいと思います。みなさんが少しでもサビ残をしないで猫におやつを買って帰る生活をするようになってくれればいいと思っています。勇者猫りりぴをよろしくお願いします。

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